ENGLISH EX 編集者の苦労話

 ALL IN ONE EXERCISE の改訂版として制作を始めた本書が,4年間の紆余曲折を経てやっと完成しました。最終的には「文法」と「語法」を含む学習書に落ち着いたため,タイトルを当初の仮称「Grammar EX」ではなく,「ENGLISH EX(Grammar & Usage)」に改めました。

 本書は,ALL IN ONE EXERCISE の文法部分を充実させた「文法編」に,新しく「語法編」を追加した内容です。文法編は高山英士氏の ALL IN ONE EXERCISE の設問と解説をベースに森一泰氏(当社の和英翻訳物の制作者)が新たな問題を加え解説しました。語法編は冠詞,前置詞,句動詞だけが高山先生で,それ以外は森先生の執筆です。二人の長所がうまく融合し,とても良い学習書になりました。自分が学生の頃にこのような文法・語法書で学びたかったと心から思う内容です。

 それにしても,本を作るというのはなんと骨の折れる作業かと,いつもながら思います(できた本を見るとその苦労を忘れますが)。著者の苦労は言うに及びませんが,編集者としての苦労もかなりのもので,特にこの4ヶ月間はほとんど一日も休みが取れませんでした。私の仕事は色々ありますが,最も重要な部分は著者の原稿を左右見開きの本文に上手く収めることです。簡単そうに聞こえるかもしれませんが,実はこれがなかなか大変です。 ENGLISH EX の場合,左頁が設問で,右頁が解答・解説になっていますが,著者からの原稿の設問と解答・解説の情報量がちょうどで釣り合うことは少なく,度々,右頁の解説を増減させなければなりません。解説が長すぎて頁に収まらない場合は解説の質を損なわないよう注意しながら情報を減らし,逆に解説が簡素すぎると感じる場合は補足情報(もちろん重要なこと)を入れます。

 このようにして出来上がった原稿は次にレベルの異なる二人の学習者に読んでもらいます。お二人から「この部分の説明がわからなかった」「こんなことも設問に取り上げて欲しい」などの意見や要望がたくさん送られてきます。疑問は言い回しを少し変えるだけで解決する場合もありますが,多くは著者にメールで報告してフィードバックを待ちます。著者はそれを参考に設問を新たに増やしたり,解説を部分的に修正していきます。著者から送られてきた原稿で再度本文の編集を行い,再びお二人に送って確認してもらいます。最終的にOKが出て原稿が完成です。この修正・変更の過程で誤表記や脱字のミスが起きるので何度も見直します。外部の協力者にも校正をお願いします(校正の方には幾度となく見落としを発見してもらい,とても助かりました)。

 また,本書で述べられていることが既存の文法書での解説と異なる場合や,単語や熟語の和訳が英和辞典のそれと異なる場合は,念のために裏付けを取ります。何冊もの英英辞典を調べたり,ネイティブの文法研究者の著述を読んだり,ネイティブのコンサルタントに質問状を出して意見を聞きます。このコンサルタントを見つけるのも一苦労です。結構ピントのぼけた回答をする人が多いからです。私の経験では,英語以外の外国語に堪能なネイティブの方が英語しか知らない人よりも的確で興味深い回答をしてくれます。今回,ENGLISH EX でコンサルティングをお願いしたのは日本の大学で修士号を取り,現在博士課程に進んでいる翻訳者です。この方にはコンサルティングだけでなく,ENGLISH EX の全ての英文もチェックしてもらいました。設問の英文に修正の赤字が入ることはほとんどありませんでしたが,所々の的確なコメントは非常に有益で,本書の解説にも反映されています。

 それから,今回は私も本文中のコラムを執筆しました。コラムが2本足りなかったので,急遽私が書くことになったのです。過去10年間 Linkage Club の読者の質問に回答を行ってきた経験を踏まえ,文法(学習)についてみなさんに知っていただきたいことを書きました。ちなみに,6つあるコラムの中で私が一番気に入っているのは高山先生による「桃栗三年柿八年英語十年」というコラムです。これは英語学習者全員に読んでいただきたいと思います。

 私達 Linkage Club のポリシーは,「まじめ,緻密,繊細,丁寧,簡潔」を心がけながら,英語の学習書を一冊一冊手間暇かけて制作し,学習者の意見・要望を取り入れながらさらに良いものへと高めていくことです。この ENGLISH EX もまた,2003年に出版して多くの学習者に支持された ALL IN ONE EXERCISE を,学習者や先生方の意見・要望を聞いてさらに良くしたものです。ENGLISH EX は現時点では我々が考える最高の文法・語法学習書ですが,我々に思いつかない改善の余地がまだ残っているかもしれません。本書で勉強をしてみて,また,本書で教えてみて気になったことや困ったことがありましたら,是非教えてください (こちらへ)。今後ともどうぞよろしくお願い致します。

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